2011.8 プノンペン事務所 浦田 富貴美

カンボジアの新しい理科の教科書

 日本では、3年に一度教科書の改定が行われる。小学校の教科書は、今年度改定になった。
 カンボジアでも、現在、理科の教科書の改定が行われており、1年生から5年生までの新しい教科書が出版されている。これらの教科書には、著作権マークがあり、また、ISBN(国際標準図書番号)、発行年度がちゃんと書かれている。現在、1年生2009年発行、2,3,4年生2010年発行、5年生2011年発行となっている。近いうちに、6年生の新しい教科書が発行される予定である。
 これまでの教科書は、外国で作られた教科書がそのままクメール語に翻訳されて使われていたため、翻訳者が教科書の内容を理解しておらず、意味を間違えて訳してしまっている個所が見られた。また、そもそも教科書の内容がカンボジアに即していないことも多かったようだ。
新しくなった理科の教科書(5年生「電気」の実験)
 では、今回の新しくなった教科書を見てみると…。以前は文字が大半をしめ、絵は少しだけ、ましてや写真などはない。実験や観察の仕方の説明も、少なかった。しかし、今回の改定で内容は大幅に変わっていないにせよ、絵だけではなく、写真も取り入れられ、実験や観察の仕方が図解入りで以前よりたくさん目につく。また、4,5年生の教科書には、表等もたくさん取り入れられており、整理して学習しやすくなっていると感じた。さらに、1年生から3年生の新しい教科書では、社会科と合本になっている。日本の小学校では、1,2年生は「生活科」といい、社会と理科が合科になっている。専門的な理科や社会科に入る前の、生活体験を重視した教科である。カンボジアの場合は、合科ではなく、単に1,2,3年生の社会と理科の教科書が一緒になったものである。特に、1,2年生の教科書は、文字が少なく、絵入りの図解が中心となっている。以前の教科書は、もっと文字も多く、図解が少なかった。
 カンボジアの理科には、衛生的な過ごし方や病気などの予防といった日本の保健学習的な要素も入っている。社会科では、規則正しい生活や交通ルールを守る、友達と仲良く過ごすなどの日本で言う学級活動や道徳的な学習要素も入っている。
 カンボジアの教科書は、基本的には貸し出し制度である。学校で1年間使用したら、また次の学年が、その教科書を使うことになる。しかし、自分の教科書を購入したいと思えば、購入することも可能である。今回、教科書出版会社で調べたところ、理科では、1年生2,300リエル($0.58)、2年生〜4年生2,600リエル($0.65)、5年生3,000リエル($0.75)である。日本から比べればそんなに高価なものではないにせよ、カンボジアの子どもたちも日本の子ども達のように、無償で教科書を手に入れることができたらどんなによいだろうと思う。一人が1冊自分の教科書を持ち、書き込んだりしながら教科書を使って勉強できる日がくればよいなと感じている。
 カンボジアの小学校には、まだまだ十分な理科に必要な資料集や実験器具が揃っていない。教科書に掲載されて学習したとしても、実際には見たことも触ったこともないというのが現実である。教えている教師でさえ、そういった経験はなく教えていることが多いだろう。しかし、以前よりもより多く実験や観察の仕方が教科書に明示されたことにより、たとえ器具や道具がそろっていなくても、身近にあるものを活用して、少しでも現場の小学校で実験や観察を取り入れた、生きた授業を展開したいと思ってくれる教師が増えることを願っている。

カンボジアの教育の記事

 カンボジアの新聞『プノンペンポスト』で、カンボジアの教育システムについての記事を読みました。題は、“Educational progress a ‘surprise’ ”です。この中で、現在のカンボジアの教育の課題が挙げられていました。それは、「高い退学率」「留年」「教育教材の不足」「非公式の授業料(先生の内職)の蔓延」「教師の低い給料」などです。カンボジアは、エチオピア、ルワンダなどのアフリカ諸国と並んで教育のワースト7の内の1つにあげられています。こういったアフリカ諸国も、カンボジアと同じように戦争や内戦があった国です。長引く戦争による人々の貧困が原因で、今もこうして十分な教育システムを確立できていないのではないかと感じます。
 ASACの調整員としてカンボジアの学校教育や識字教育に関わらせてもらい、上記のような課題を実感する日々です。しかし、課題が大きいからこそ、こうして私たちの活動も大きな意味を持つのだと思います。これからも、ASACの会員の皆さんと共に、カンボジアの教育に少しでもお役に立っていきたいと決意を新たにしました。