2011.10 プノンペン事務所 浦田 富貴美

カンボジアの大洪水

 多くの方が日本でのニュースでご存知かと思いますが、現在、カンボジアとタイでは、大量の雨による大洪水の被害が大きくなっています。タイでは、多くの日系企業の工場が浸水し、営業停止状態になっています。一方、カンボジアでも、タイと違いメディアに大きく取り上げられませんが、洪水の被害が広がっています。始まりは、9月下旬のプチュンバンにかなり大量の雨が降り、メコン川やトンレサップ湖が氾濫し、浸水の被害が広がりました。現在、洪水による死者も、200人を超え、27万世帯が被害を受けているとも聞いています。(10月10日付、Cambodia Dailyより)
 ちょうど、私は9月下旬に日本へ帰国していました。9月30日にカンボジアへ戻りましたが、着陸寸前に飛行機の中から見た様子は、いつもと違っていました。川が増水し、その水があふれ出し周りもほとんど浸水状態でした。かろうじて数件の家が見えるくらいですが、まさに孤立状態となっていました。あまりの浸水状況に、胸騒ぎがしました。案の定、その後、家に帰ってメールを確認したところ、大使館からの洪水被害を知らせるお知らせが来ていました。それで、カンボジアの洪水の被害の大きさを改めて知りました。この洪水は、当初2000年以来の大洪水と言われていましたが、現在は、その被害の大きさに、2000年を超える大洪水と言われています。
浸水した家の周りの様子
(コンポンチャム州バティエイ郡トロップ地区)
 ASACの識字事業地であるコンポンチャム州バティエイ郡は、カンボジアの中で最も死者が出ている地域だと聞きました。そのため、9月に開催するはずだったバティエイ地区の識字教室の開講は延期されています。
 また、同じバティエイ郡トロップ地区に、先日、次年度の事業調査視察に行かせてもらいました。コンポンチュナン州と接するこの地域は、トンレサップ湖の支流が流れています。その川の水があふれ出し、いつもは浸水しない地域までも浸水していました。地区に1つだけある中学校は、お腹のあたりまで浸水しているため、現在、休校中でした。
 カンボジアの田舎の地域では、ほとんどが高床式の家であるため、家の中は浸水していなくても、その周りは浸水しています。子どもたちは、学校が休校になっているため、浸水した水の中に飛び込みプール代わりにして遊んでいました。また、浸水しているため牛や豚などの家畜は、浸水の少ない盛り上がった道路につながれていました。しかし、この浸水している水は、家畜の糞やいろんなものが混ざっており、子どもたちがプール代わりに遊んでいると、後に、その水が原因で皮膚病や感染症、下痢を引き起こす原因になります。こういった病気になると、薬を購入したり、病院に行ったりしなければいけませんが、浸水した道を行くのは一苦労です。そのまま放置しておくと、そういった病気でも死に至る可能性があります。また、井戸なども浸水していると、飲料水として飲む水も衛生的ではありません。水を煮沸するための薪木も浸水のため使い物になりません。食事のために火を熾すのも大変です。そうなると、大人でも同じような病気になりがちです。
 さらに、その浸水被害は、今後の経済状況にも大きく影響されると考えられています。農業国であるカンボジアは、そのほとんどが田畑です。今回、お米の収穫前の水田が浸水してしまったため、これから収穫し、来年売るためのお米が全てだめになったのです。面積にして、35万7千haの水田が被害をうけ、そのうちの15万haのお米がだめになっているそうです。(10月10日付、Cambodia Dailyより)そうなると、農業で生計を立てている人たちが収入を得ることができなくなるだけでなく、カンボジアの国自体のお米が不足し、物価が上がる可能性もでてきています。
 現在、政府や赤十字社、NGOなどがそういった洪水による避難民に支援をしています。しかし、避難せずとも、まだまだ浸水した状態で、自分の家に孤立した状態で暮らす村人も多くいるのが現実です。  最近は、雨季も終わりに近づいてきたため、日中はほとんど雨が降らなくなりました。だいたい毎晩、少し雨が降るくらいになりました。早く雨季が明け、一日でも早く洪水の被害がなくなることを願ってやみません。