2011.12 プノンペン事務所 浦田 富貴美

何が本当の幸せ?〜識字教室視察から〜

 今年の9月中旬より、コンポンチャム州トムノ地区トロペアンスノー村で識字教室が2教室開催されています。トロペアンスノー村では、昨年に引き続いての2年目の開催となります。どちらもトロペアンスノー小学校の先生が教えています。その識字教室を先日、視察に行ってきました。
マイ先生と覚えた文字を書く生徒
(コンポンチャム州トロペアンスノー村)
 一つ目の教室は、女性のマイ先生の教室でした。トロペアンスノー小学校の先生をしながら、このASACでの識字教師もしています。若いですが結婚をしており、小さなお子さんもいます。今年で2年目になります。とても熱心に教えてくれるため、生徒からも人気です。そんなマイ先生のクラスには、10代後半の若い女の子たちがたくさんいました。また、これはどの識字教室でも見かける光景ですが、若いお母さんが小さな子どもを連れて参加していました。
 今回、そんな若い年代の女性の学ぶ姿を見ながら、ふと感じたことがあります。それは、これが日本の同じくらいの年代の人達だったらどうなんだろうと。識字教室に通う彼女たちは、文字の読み書きと計算を学びに来ています。文字とは、「外国語」ではなく「母国語」です。識字教室の教科書やノートを入れるカバンは、ビニール製の使い古しの袋を使っている人がほとんどです。農作業や家事を終えて来ていますので服装もそのまま、もちろんお化粧などはしていません。
 では、日本の同年代の女性達はどうでしょう。きれいにお化粧をし、バックに必要なものを入れて持ち歩きます。特別な理由がない限り義務教育を受け、文字の読み書き、計算はほとんどの人ができるでしょう。
 でも、「では何が本当の幸せか?」と考えました。幸せは、他の誰からも決められません。その判断は、本人自身が決めるものです。物が豊富にあるから幸せか、きれいにお化粧できるから幸せか。それは、なんとも言えません。しかし、「教育の機会に恵まれる」ことは、すごく大切なことなのだなと思いました。文字が当たり前のように読み書きできることで、今後の人生も大きく変わってきます。もしも私たちが、母国語である日本語を読み書きできないと想像してください。今のような生活を毎日送れているでしょうか。そういう意味では、このような若い年代の女性に再教育の場である識字教室が開催されることは、改めて本当に大切な機会であると感じました。今後、彼女たちが読み書きができ、知識を得て、自分の人生をさらによい方向に変えていけるよう応援していきたいと思います。
 ASACの識字事業地であるコンポンチャム州バティエイ郡は、カンボジアの中で最も死者が出ている地域だと聞きました。そのため、9月に開催するはずだったバティエイ地区の識字教室の開講は延期されています。
 また、同じバティエイ郡トロップ地区に、先日、次年度の事業調査視察に行かせてもらいました。コンポンチュナン州と接するこの地域は、トンレサップ湖の支流が流れています。その川の水があふれ出し、いつもは浸水しない地域までも浸水していました。地区に1つだけある中学校は、お腹のあたりまで浸水しているため、現在、休校中でした。
 カンボジアの田舎の地域では、ほとんどが高床式の家であるため、家の中は浸水していなくても、その周りは浸水しています。子どもたちは、学校が休校になっているため、浸水した水の中に飛び込みプール代わりにして遊んでいました。また、浸水しているため牛や豚などの家畜は、浸水の少ない盛り上がった道路につながれていました。しかし、この浸水している水は、家畜の糞やいろんなものが混ざっており、子どもたちがプール代わりに遊んでいると、後に、その水が原因で皮膚病や感染症、下痢を引き起こす原因になります。こういった病気になると、薬を購入したり、病院に行ったりしなければいけませんが、浸水した道を行くのは一苦労です。そのまま放置しておくと、そういった病気でも死に至る可能性があります。また、井戸なども浸水していると、飲料水として飲む水も衛生的ではありません。水を煮沸するための薪木も浸水のため使い物になりません。食事のために火を熾すのも大変です。そうなると、大人でも同じような病気になりがちです。
 さらに、その浸水被害は、今後の経済状況にも大きく影響されると考えられています。農業国であるカンボジアは、そのほとんどが田畑です。今回、お米の収穫前の水田が浸水してしまったため、これから収穫し、来年売るためのお米が全てだめになったのです。面積にして、35万7千haの水田が被害をうけ、そのうちの15万haのお米がだめになっているそうです。(10月10日付、Cambodia Dailyより)そうなると、農業で生計を立てている人たちが収入を得ることができなくなるだけでなく、カンボジアの国自体のお米が不足し、物価が上がる可能性もでてきています。
 現在、政府や赤十字社、NGOなどがそういった洪水による避難民に支援をしています。しかし、避難せずとも、まだまだ浸水した状態で、自分の家に孤立した状態で暮らす村人も多くいるのが現実です。  最近は、雨季も終わりに近づいてきたため、日中はほとんど雨が降らなくなりました。だいたい毎晩、少し雨が降るくらいになりました。早く雨季が明け、一日でも早く洪水の被害がなくなることを願ってやみません。

明けましておめでとうございます

 もうすぐ、2011年も終わります。カンボジアでは、4月のクメール正月を祝うため、年末年始も普段通り仕事です。ただ、唯一の「お正月気分」を味わえるのが、カンボジアでもNHKを通して「紅白歌合戦」を見ることができることです。しかし、日本時間の夜8時から開始ですので、カンボジアでは、午後6時からです。夕食の支度をし、食事をしていたら、あっという間に終わってしまいます。
 さて、2011年を振り返ってみますと、本当にあっという間でした。昨年の12月のスタディーツアーが、つい最近のことのように感じます。それだけ、充実した1年だったのだと思います。
 また、一言で言えば「感謝」の1年でもありました。多くの方々に支えられて、こうしてASACプノンペン事務所での活動を行えること、皆様方の真心からのご支援でカンボジアの子どもたちの笑顔に触れられたことを本当に感謝しています。
 来年も皆様方からの真心を最高の形でカンボジアの子どもたちに届けられるよう、この「感謝」の気持ちを大切に、現地スタッフと一緒に頑張っていきます。