2013.6 プノンペン事務所 浦田 富貴美

プノンペンの水道事情

 先日、プノンペン水道公社(Phnom Penh Water Supply Authority【PPWSA】)に見学に行く機会がありました。水道公社と言えば、「プノンペンの奇跡」と言われる次のような話で有名です。市役所内の水道部局長であったエク・ソン・チャン氏が、職員の意識改革に着手しながら、「貧困層へきれいな水を供給」を掲げプノンペンの市内中心部や郊外のエリア内で貧困層へのサービス提供に努力。1997年には公社として独立、現プノンペン水道公社(PPWSA)が設立されました。現在プノンペン市内では24時間給水、水道普及率は90%に達しています。そして、そのような功績からカンボジアの正式株式取引で上場したのは、プノンペン水道公社1社のみです。
 水道公社の中には、トンレサップ川から引いてきた水を浄水する施設も併設しており、かなり広い敷地でした。中でも驚いたことは、カンボジアの無収水率 1)は5.85%(2010年)。4.42%の東京都(2009年)とほぼ同じレベル。お隣のバンコク(33%)などとは比べ物にならない程、無収水率が低いそうです。また、水質も非常によく、WHOの水質基準を満たしています。そのため、水道水をそのまま飲んでも安心とのことでした。
ソーラーパネル(左上)と川の水が浄水されている様
そして、水道料金徴収率は99.9%。もちろん正確なメーターで測り、きちんと水道代を支払うシステムも整っています。さらに、ポンプで配水するのに電気を使ったり、全てのシステムを24時間体制でコンピュータ管理したりしている関係で、かなりの電気代がかかることから、浄水施設の上にたくさんのソーラーパネルを設置し、電気代の半分をまかなうなどの工夫もされていました。そういったことから、カンボジアの浄水場と言うよりは、日本の浄水場を見学している気分になるほどでした。
 そう言った中、新聞では、フンセン首相の「電力と水力が、今後も不足するだろう。」と言う記事が掲載されました。(6月5日付 Cambodia Daily)人口の急速な増加と共に、建設ラッシュ。200万人近い人口に膨れ上がった首都プノンペン。近く市内に4か所目となる新しいニロート浄水場が完成しますが、それでも、プノンペン市内の人々に十分にきれいな水を供給することが追いつかず、水不足は否めないとのことです。空港に近い郊外にある私の家では、乾期には毎日のように2〜3時間の停電、朝や夕方から夜にかけてたくさんの人が生活に必要な水を使っている時間は、水道の蛇口からは水はちょろちょろ。シャワーを浴びるのも、食器を洗うのにも時間がかかります。クメール正月など市内にほとんど人がいない時は、じゃんじゃんと水が出てきました。毎日、こんな風に水が思いっきり使えたらいいのにと、首都プノンペンに住んでいるとついつい贅沢なことを考えてしまいます。
 なぜなら、カンボジア国土全体を見てみると、水道普及の国内の格差はまだまだ大きく、4割程度の人にしか安全な水が供給されていません。「蛇口をひねれば、きれいな水がいつでも出てくる」のは、首都プノンペンや一部の都市だけです。田舎に住む人々にとってきれいな水は、雨水。生活用水は、井戸や川、池の水です。カンボジアの井戸水には、大腸菌などが多く含まれ、飲料水としては使えません。それでも、そういったことを知らずに井戸水を飲んでしまい、お腹を壊してしまう子どもたちも少なくありません。プノンペンの水道水のように、カンボジアの全国民がきれいな水を使える日が早く来ることを願ってやみません。

1)無収水率: 浄水場から配水された水道水の内、漏水や盗水等により水道料金徴収に結び付かなかった水の割合。この値が小さい程、適切な配水管理が行われていると言える。