2014.2 プノンペン事務所 浦田 富貴美

カンボジアのデモ

 カンボジアのお隣タイでは、現政権に対抗する反政府デモが活発となり、日本のニュースでもかなり報道されていることと思います。しかし、カンボジアでも実は、昨年末からデモが活発となっています。
 年が明けてすぐの1月3日。忘れもしない出来事が起こりました。ASACスタッフのソングリーが、涙目で、「家のすぐ近くで、縫製工場の工員のデモ隊と治安部隊が衝突し、銃撃されたらしい。デモ隊の4人がすでに亡くなったとのこと。家には、妻がいて、とても怖がっている。どうしたらよいでしょうか。」と。
早朝、乗合トラックで工場に出勤
 12月中旬に労働省が、縫製工場で働く工員の最低賃金を$80まで上げると発表しました。以前は、最低賃金は$60でした。しかし、この金額に満足がいかない工員たちがデモを起こして、働くのをやめて工場団地周辺の道路を封鎖していました。彼らの主張は、最低賃金を$160にしてほしいとのこと。工員の給料には、最低賃金に加え、食事代と健康維持費などがプラスされます。また、残業をすれば、その分の残業代ももらえます。そうしていくと、おそらく1ヶ月$150くらいにはなると聞きました。しかし、首都プノンペンで生活するには十分ではないとの主張です。

ASAC事務所前のゴミの山
 そうこうしていると、今度は、2月初旬にゴミ収集会社の「Cintri(シントリ)」の従業員たちが、給料を上げてほしいとデモを起こしました。その間、従業員たちは働かず、プノンペン市内ではゴミが回収されず、出されたゴミはそのままになっていました。たった数日間でしたが、市内にはゴミがあふれました。その周りをハエが飛び回っています。
 ASACプノンペン事務所の前のノロドム通りでは、ちょうどその時期、下水道管工事が行われていたため、車などが行き来できず、デモが起こる前から回収も滞りがちでした。その上に、デモでまったく回収がなくなると、ゴミはたまる一方で、かなり衛生的にもよくない状態となっていました。
 ゴミ収集の会社で働く人々の給料は、これまで1ヶ月約$65ほど。夜勤をする人は、その約2倍の$120だったそうです。それが今回のデモで、会社側がそれぞれ$20〜25あげることで合意。デモは治まり、ゴミ回収は再開されました。
 経済成長真只中のプノンペンでは、それに伴い物価の上昇もどんどん進み、人々の生活は確かに大変になってきているのを実感します。しかし、縫製工場でのデモの際、行き過ぎた治安部隊からの銃撃で、本来ならば失うはずのなかった若い人の尊い生命が失われたことは、本当に悔やまれて仕方がありません。と言うのも、1月3日のあの日のデモで、5人目の犠牲者となったのは、ASACスタッフのソングリーの親戚だったからです。26歳の彼には、田舎に奥さんと幼い二人の子どもがいました。毎月、工場で働いたお金を仕送りし、家族を支えてきたそうです。