2008.6
プノンペン事務所 眞野 ちひろ

狂乱物価

 原油価格、食糧価格が日本のみならず世界的にも高騰していることはご存知のことと思いますが、私たちが活動しているカンボジアもその例外ではありません。むしろ、国民の35%が貧困にあえぐカンボジアにとって物価高は日本以上に深刻で、様々な団体が貧困層への米支援を始めています。
 一部の農作物も含めたほぼ全ての生活必需品を隣国タイやベトナムからの輸入(陸路)に頼っているカンボジアでは、原油価格の高騰がすべての品物の急激な価格高騰につながっています。また、米の値段が世界的に上がってしまったために、カンボジアの米がどんどんタイやベトナムへ売られてしまい、3月末にフンセン首相はついに緊急米輸出禁止令を出しました(5月末に解除されましたが)。物価上昇を如実に示すグラフが、地元の新聞に載っていましたので、一部を右に掲載します。実際に私の肌感覚でも、今まで3,000リエルで食べられていたクイティウ(米から作る蕎麦)が最近では7,000リエルもして目が飛び出るほど驚きました。

狂乱物価学校給食も停止に

 それにも増して心が痛んだのが、WFP(世界食糧計画)の給食支援停止のニュースでした。カンボジアでは、国の制度としての給食はないのですが、WFPから貧困地域の児童45万人へ米・豆・魚の缶詰・油などの支援があり、それを使って村人たちが毎日朝食を作り、学校で児童に振舞うというシステムがあります。これによって、貧困家庭の子供も"給食が食べられるから"という理由で学校へ通うようになり、就学率の向上に一役買っていました。ASACが昨年末までに建てた104校のうち21校でも給食が行われていました。
 しかし、ここにきて物価高のあおりを受け、WFPが5月からその支援の一時停止を決めたのです。私が6月初旬に訪問した学校では、給食停止によって1割の子供が学校へ来なくなってしまったと聞きました。また、子供たちが朝食を食べられないために1日2食になったり、何とか家で食事はとるものの朝学校に遅刻してくる子が多くなったりしているという話も新聞に出ていました。

米を作っていても食べられない?!

 ここであれっ?と思う方もいらっしゃるかもしれません。カンボジアは国民の7割が農民だと言われています。貧困地域ではほぼ100%が農民です。米を作っている彼らが米価格上昇の恩恵を受けず、逆に飢えてしまっているのは何故でしょうか。諸説あるようですが、ひとつには米の収穫時期が影響しています。カンボジアの米の多くは乾季に入る11−12月頃に収穫されます。しかし去年の12月はまだ米の価格は正常でしたので、農民たちは価格上昇の恩恵を受けることができませんでした。では、今年2008年の12月には農民は大金を手にすることができるのかというと、そうでもないようです。米の収穫期は供給量が多い分、価格が下がるからです。農民は米を1回作るのに多くの借金をしていますので、収穫後はすぐに現金を手に入れて借金を返さなければならないそうです。そのため、米の価格が高くなるまで手元に置いておくということもできず、"農民が米を食べられない"という状態を生んでいます。
 政府も決して手をこまねいて見ている訳ではありませんが、これはカンボジア一国だけの問題ではないため、解決は容易ではないと思います。