2008.10
眞野 ちひろ(プノンペン事務所)

小学生の退学を減らすために


学校に通えなくなり、大人の識字教室に来た子供達
 プノンペン事務所の調整員として私が働きだして1年3ヶ月が過ぎました。この間、多くの小学校を訪れて、カンボジアの小学校の現状を見聞きしてきました。カンボジアの子供たちは各機関の努力によりだんだんと小学校へ通うようになり、2007年には純就学率(注)が90%になりました。しかし、一方で子供たちがなかなか小学校に定着しない、という現状があり、カンボジア教育界の大きな課題になっています。子供が退学してしまう理由は、家庭の事情や学校の環境など様々です。またその背景には、農村の貧困問題、親の理解不足、女性に対する伝統的な価値観、また小学校がいわゆる“義務”教育ではなく、親には努力義務しか求められていない事などがあります。
 もちろん、カンボジアでは国民の6−7割が農民ですから、農民である限り、普段はそれほど高度な学力を必要としません。しかし、生活に必要な情報を得るため、また人にだまされないようにするためには、最低限の読み書き能力は必要です。小学校を2年生や3年生で辞めてしまう子供は、大半がその後、読み書きを忘れてしまい文盲の道を歩むことになります。ASACは学校建設のほかに、大人に対する識字教育にも力を入れていますが、読み書きができるようになる大人がいる一方で、新たに若い非識字者が大量生産されている現実があります。その証拠に、この秋から識字教室が始まったタンクロサン地区では、大人のための教室に入学を希望するおおぜいの子供たちが来てしまった、ということがありました。昼間の学校へは行けないけれども、夜間の識字教室であれば家事を終えてから通うことができる、と言うのです。
 カンボジアの教育省もこの問題を強く認識しており、夏休みを利用した「復学プログラム」を実施しています。一度学校から離れてしまった子供たちを夏休みの学校に集めて、遅れてしまった勉強を教え、新学期から学校へ戻れるようにするプログラムです。しかし、予算不足から全ての地域で毎年開催できるわけではありません。
 幸いにも、地域の行政には教育興隆に熱心な方が多いです。プノンペンのASAC事務所まで学校建設や識字教室の嘆願書をお持ちになられる方もいて、そのガソリン代だけで大変な費用だろうに、と頭が下がります。ASACはこれからも学校不足の解消に取り組むとともに、識字教室などを通じて、こういった人々と協力し知恵を出し合いながら、1人でも多くの子供たちが正規の学校へ通えるように努力していきたいと思います。

(注)6歳〜12歳の子供のうち就学する割合。約1割の子供は小学校に入学することができないでいます。一方、13歳以上でも小学校に行く子供が少なくなく、全小学生の約2割に達します。入学しても6年生まで進級して卒業できるのは約半数です。