2009.4
眞野 ちひろ(プノンペン事務所)

カンボジアの電力事情

 乾季になると私の頭を悩ませるものがあります。それは摂氏35度の暑さではなく、“停電”です。プノンペンではここ数年、乾季の半年間はほぼ連日、数時間にわたる停電があります。その度にASACの事務所では発電機を使わなければならず、そのガソリン代と発電機の騒音は悩みの種です。停電が頻発している原因としては、人口増加、都市化(電気や冷房を沢山使う)、工場の増加(優先的に電気が回される)などが挙げられ、需要に対する電力供給が全く足りていないために言わば計画停電のような形で停電が繰り返されています。いったん停電になると、家庭では冷凍庫の中のものが溶けて外へ水が流れ出し、屋外では信号が止まり交差点は大混乱。また、プノンペンでは17時以降の夜間に学ぶ大学や塾が盛んですが、停電になるとこうした学校は授業にならないので、生徒は家に帰ります。ただ、これらの停電はプノンペンやその他大きな都市だけの話で、国内の電化率は多く見積もっても20%に過ぎないと言われており、今後の経済発展により地方での需要が拡大すれば、ますます電気が足りなくなるのは明らかです。
 現在カンボジアは電力のほとんどを隣国のタイやベトナムから購入することでまかなっていますが、カンボジアは電気料金が世界で最も高い国のひとつであると言われており、外国資本の投資や経済発展の妨げにもなっています。  こうした電力不足を解決するため、カンボジア政府は水力を最も重要なエネルギー源として位置づけています。政府は2008年5月に大規模な水力電気事業計画を打ち立て、32億ドル(約3200億円)、計14の新たなダムが作られる見込みです。これによって、およそ1万メガワットの電力が得られるとされていますが、現在稼動しているダムはまだ5か所、発電されている電気は合計20メガワット以下です。
建設が進むカムチャイダム
 そんな中で注目されているのがカンポット州のカムチャイダムです。カムチャイダムは、カンボジアで建設される初の大規模ダムで、場所はカンポットの市内から車で15分ほど。現在は中国資本によって工事が進められており、総工費は日本円にして280億円。完成のあかつきには中国企業による44年間の運営管理ののちにカンボジアへ譲渡されることになっています。しかしこのダム、賛否両論があります。新たな電源開発の必要性は誰もが認めるところですが、建設計画段階での十分な環境アセスメントはなされておらず、立ち退き住民への補償も不十分、ダム下流の住民への説明は皆無、など問題を抱えており、ダム反対の声を上げるNGOも多くいます。
 実際カンボジアには、ダムによって生活が脅かされ始めている地域もあります。メコン川上流のベトナムのダムにより、下流のカンボジアで魚が獲れない、水が濁る、水位が急に変化する、等の問題が報告されています。これらの問題は解決されるどころか、カンボジア側のメコン川でも更なるダムの建設計画が進められています。都市部の住民のために農村部が犠牲になるという、カンボジアの開発が抱える問題点がここにも見てとれます。