2009.8
眞野 ちひろ(プノンペン事務所)

今度は出産です

 結婚に続いて、今度は出産することになりました。今年は大変な年です。出産をカンボジアでするか日本でするか悩んだのですが、結局日本を選ぶことにしました。日本で産む場合、ASACの仕事から長期間離れなければならないため苦しい選択でしたが、日本を選んだ理由はカンボジアの医療事情でした。私を診てくれた産婦人科医からは、何でもない普通の出産であればカンボジアでもできるが、万が一何か問題のある出産だった場合、カンボジアではあなたは助かりませんよ、と言われました。産院のたらい回しや医師不足など問題は指摘されているものの、周産期医療に関して日本は世界のトップレベルなのだそうです。片やカンボジアはポル・ポト時代に医療関係者がほぼゼロになった国。今もその影響がカンボジア全体に深刻な影を落としています。私の姪っ子は、7ヶ月で生まれた超未熟児でしたが、保育器の中で眼をやられてしまい片目が失明してしまいました。こういうことも日本ではもう起こりえない医療事故だそうです。
 カンボジアの妊産婦死亡率1万人中54人(2006年)、1歳以下の乳児死亡率1,000人中70人(2007年)という数字も、周辺の東南アジア各国の中では最も高いです。原因は伝統的な出産方法と近代的な知識を身につけた助産師の不足にあると言います。カンボジアの田舎では妊婦のほとんどが自宅で出産します。彼女らの伝統的な出産方法は例えば、赤ちゃんのへその緒の切断面に灰やクモの巣を付ける(私の夫もこれをされた)、産後の母親を3日間炭火であぶる、など。これらの出産方法に加えて、例えばへその緒を切るはさみが不衛生であるために破傷風で妊婦や新生児が亡くなる、なんていうことも田舎ではよくあるそうです。伝統的な出産方法のすべてが悪いとは言いませんが、かと言って近所に近代的な設備と人員を整えた産院があるかというと田舎ではそうもいきません。人口約1万人に1ヶ所設置されているという保健所でさえ、常駐の助産師は1人か2人。その保健所に医師はいませんが、これが地域で唯一の医療機関だったりします。
 もっと都会はどうかと言うと、州都やプノンペンには国立の病院や、私立のクリニックが多くあります。ですが、これも多くは期待できません。私は1年半前に交通事故に遭いましたが、その時にまず連れて行かれたコンポントムの州立病院ではレントゲンの機械が壊れていて、骨折かどうか分からない、点滴のみしかできないと言われました。カンボジア人はお金持ちの場合、病気になるとタイやベトナムといった近隣の国へ治療に行きます。医師不足を改善すべく毎年約200人もの医者が誕生していますが、その技術は決して高いとは言えず、外科手術のできるカンボジアの病院はまれです。
プノンペンのスタッフ、岡村理事長とともに
お腹が痛くてプノンペンの病院に駆け込んだ妊婦が薬を与えられただけで放置され、妊婦も胎児も亡くなってしまった、という話がニュースになったりしています。
 私たちが取り組む教育分野と同様に、医療保健分野でもカンボジアでは多くの援助機関が活動しています。それらと政府が一体となって、徐々に状況は改善されてきているということですので、今後に期待するしかありません。私の子供が子供を産む頃には、カンボジアで安心して産めるようになってほしいと思います。私もまずは日本で元気な赤ちゃんを産んで戻って参ります。それでは、サバイ100号でまたお会いしましょう。