平成21年度国際ボランティア貯金に係る寄附金による援助事業
識字教育の実施及び識字教師の育成
(カンボジア・コンポンチャム州)

【事業地】

コンポンチャム州 バティエイ郡
バティエイ地区:
トゥール村  (2クラス)
オマール村  (2クラス)
トムノ地区:
トロペアンスノー村  (2クラス)
ルーン村  (1クラス)
スルン村  (1クラス)
プロサン村  (1クラス)

【識字事業実施決定】

洪水時の村の様子
 平成21年度国際ボランティア貯金寄附金の配分がこのたび決定され、コンポンチャム州バティエイ郡の6村9クラスで識字教育を展開することになりました。この地域は比較的プノンペンに近いところでありながら、雨季にはメコン川の氾濫で交通困難となります。ASACはこれまでも継続してこの地域での識字教育に取り組んできていますが、非識字者を多数抱えた村がまだあり、教育省、バティエイ郡から識字教育実施の要請を受けていました。中には非識字率が6割を超えるような村もあり、対策をしなければならないのは明らかですが、治安が悪いため見送らざるを得ませんでした。7月から村への説明を行い、実施に入る予定です。

(2010年8月ごろトップページに掲載)

【教師トレーニング】

識字教師が共同制作した民家の模型
 コンポンチャム州バティエイ郡の6村9クラスで2010 - 2011年の識字事業が始まりました。
 まず最初に8月2日から25日まで識字教師のトレーニングを行いました。教師経験者は多いですが、大人を教えるためには、昼間働いている村民の事情を良く理解し、疲れている人には時折気分転換をさせたり、進度の遅い人には気を配って面倒を見て上げるなど、子どもに対する教育とは違った観点から教授法を学ぶ必要があります。このようにしてトレーニングを受けた先生から、生徒は安心して教わることができます。
 このあと各村での呼びかけと生徒募集、読み書きできない生徒の選出を行って、いよいよ半年にわたる識字教室が開講します。

(2010年8月27日発行の会報誌サバイ103号に掲載)

【第16回識字教室開講】

 1コンポンチャム州バティエイ郡の6村(9クラス)で7月に開始された識字事業は9月10日開講式が行われました。地区長、村長らを来賓に迎え、隣接するクラスをまとめて、教室会場の寺や小学校で行われました。来賓のスピーチからは事業開始を喜ぶ期待の気持ちが伝わってきます。

開講式でのバティエイ地区地区長、クット・ヒム氏のスピーチ
 来賓、識字教師生徒の皆さんに敬意を表します。
岡村眞理子さんがこの地区で識字教室を開催してくれて以来2度目の教室開催で私達は心から嬉しく思っています。生徒の皆さは最善を尽くして学習してください。テキストには社会を理解し、読み書き計算を習得するための役立つ知識が書かれています。
生徒は小黒板で文字を書く練習をします
 以前私は非識字者でした。当時国は内乱で親と兄弟は病気で私は農作業を手伝うため学校を中退しました。運よく国主催の識字教室が開催され参加することにしました。国の発展のため国は人材育成を必要としています。人材は私達です。では、どうしたら私達は役立つ人材になれるでしょう? 読み書き計算ができ、少なくとも収入と支出を管理できる事、つまり、緊急事態に備えて貯蓄し、日記に収入と支出を記録しそれをはっきり知る事です。教師や政府の高官にならなくとも、もし家族を良い状態で生活させることができればそれで十分です。カンボジアの人々の支援に尽力しているASACに心から感謝いたします。識字クラスに参加することは貧困削減の大きな部分です。

 開講式の約1ヶ月後、会は教室を視察しました。生徒達は楽しく教室に通い、学習意欲も高く、クメール文字の構成が分かるようになっていました。クラスでは小黒板に文字を正しく書き、先生が毎日宿題を与えるので、毎日ノートにきれいに文字の練習をしている生徒もいました。

(2010年10月27日発行の会報誌サバイ104号に掲載)

【識字の事業地を視察】

近内 妙子

 平成21年度国際ボランティア貯金寄付金によってコンポンチャム州バティエイ郡で行われている識字事業を視察するため、12月31日〜1月13日、事業地を訪問しました。
 視察の主な目的は、生徒の出席状況と学習状況の観察、生活日誌の記入状況及びミニライブラリーの活用状況の把握、フォローアップで計画している自主学習会の検討でした。
 視察を終えて大きな収穫は、学習の機会を得た識字生徒の喜びを直接感じ、事業の意義を再認識できたことです。トゥール村で授業参観した時、30代のある女の生徒は「私はこんなに字が読めるようになってとてもうれしいです。本を読ませてください!」と、立ち上がってテキストを読み始めました。心から喜び、笑みを浮かべ、大きな声ではっきりと読むその姿に私たちはとても感動しました。次に訪れたスルン村でも「来年も教室を続けて下さい」と生徒に懇願されました。
 6ヶ月の教室が終了するとせっかく覚えたことを忘れてしまう、という生徒の悩みに対処するため、今事業ではフォローアップに生徒主体の「自主学習会」を計画しています。生徒にこの内容を提案すると、「ぜひ、やりたいです」「週1回2時間、机があるから先生の家がいいです」「私がリーダーになります」と、とても積極的に受け止め、雰囲気が盛り上がりました。「勉強をしているととても幸せで、止めると目の前が暗くなる」と言った生徒もいます。3月以降ぜひ実現させ、その結果を持って今後の事業でも継続していきたいと考えています。
 読み書き計算の知識を定着させる目的でASACが作成し導入している生活日誌は、今事業では早い時期に指導を開始したためか、どの生徒も記入状況が良く有効に活用されている様子が分かりました。「生活日誌を書くと、豚の飼料にいくら使ったのでいくらで売ればよいか分かる、家計を計画できる」と生徒、教師から良い評価を得ています。
受講生とともに
 また、昨年度事業からASACは、事業村にミニライブラリーを設置しています。これは村には読み物がない為、識字生徒のみでなく村民も自由に利用できるように、プラスチックケースに本を30冊程度入れ、教師の家などに置き、貸し出し読んでもらっています。前回設置した場所を訪れ、図書の状態、活用状況を教師から聞き、本が村民に有効に活用されていることを確認しました。
 田んぼの中に点在する小さな家、そんな家の一つに大きな「日の丸」のバナーが掲げられ、そこが識字教室の会場です。暑く、砂埃が舞う道、この道を生徒は夜間懐中電灯を頼りに通ってくる、と思うとその努力の大きさに感銘します。6ヶ月間、月曜から土曜まで、仕事の後教室に通う生徒、指導を続ける教師、協力してくれる地元、世話をするASACスタッフ、それらがあってこの事業が成功しているのだとつくづく感じました。
 トゥール村では村長さんたちと村の散策をしました。家が密集しているこの地域はどの家も高い高床式で、雨季にはメコン川が氾濫し村全体が水没してボートで行き交う不自由な生活の様子が想像されます。スルン村の生徒の中には10代後半の男子が2名いました。小学校を退学してしまったのであろうこれらの生徒を見て、事業の意義を再認識しこの事業が村民の生活向上に少しでも役立つことを心から願いました。

(2011年2月23日発行の会報誌サバイ106号に掲載)

【識字教室終了】

お寺で行われた2クラス合同の修了式
 3月14日、15日に、昨年9月から開講した2地区9村での識字教室の修了式が行われました。
 昼間は働き、夜教室に通い続けることは大変だったことでしょう。時には本人や家族が病気になったり妊娠したりという様々な困難がありながら学習を続けたことは、村人の学びたいという意欲の現れです。
 203人の生徒が最後まで学び続け、196人の生徒が試験に合格することができました。最後まで通った生徒たちには今後も文字に親しめるよう読本を配布しました。

(2011年4月20日発行の会報誌サバイ107号に掲載)

【修了生へのインタビュー】

 コンポンチャム州バティエイ郡の6村9クラス、225人を対象に行われた識字クラスは、3月閉講、その後2ヶ月間のフォローアップを終え、国際ボランティア貯金寄附金配分の平成21年度識字事業は無事に終了しました。最後まで学習を続けた203人が修了試験を受け、196人が試験に合格しました。 修了生の喜びと感謝の声を紹介します。
ASACスタッフが修了生にインタビュー

フン・スレイニーさん、15歳
 以前私は非識字者でした。2学年まで勉強した事がありますが、学校を止めてしまいました。理由は授業についていけなくなったことと、勉強を続けるお金が無く、母親に止めるよう言われたからです。しかし、その後ASACのクラスに6ヶ月間参加し、読み書き計算ができるようになりました。識字教室では国の学校よりも多くを勉強したと思います。コースが終わった時、識字教室のカ・ソティ先生が、私にもう一度学校で学びたいかと尋ねました。私はとても嬉しく、「はい、勿論です。」と答えました。先生は書類を作成してくれて私は国の学校の5学年に復学することができました。再び学ぶ機会を得るなど考えた事もなかったので、心から嬉しく思っています。私に教育を与え、予期したことも無い良い将来に向かって歩ませてくれたASAC に感謝しています。今私は生まれ変わったと感じます。勉強ができて他の人と同じように文字を読み書くことができます。感謝の気持ちを物でお返しできませんが、ASACの発展と成功をお祈りいたします。親切な支援をありがとうございます。

フン・スレイニーさん、15歳
 わたしはASACの識字生徒です。以前私は読んだり書いたり計算が全く分かりませんでした。そのため商売で計算が必要な時とても困っていました。分からなくて支払いすぎてしまったこともあります。私は再利用する為にゴミを回収していますが、計算が分からなくて相手に多く支払ってしまうとその日は収入が無くて家族を養えません。また、貧困であったため、弟も学校を中退させて米を買うためにごみ回収の仕事を手伝うよう頼んでいました。しかし、今は教育がとても大切であると分かりました。弟が良い仕事につき貧困から抜け出すため、私は弟を学校に通わせなくてはいけません。自分ひとりの収入で弟を学校に通わせるのは今の自分にとってとても大変なことですが、弟の将来のために私は頑張らなければなりません。ASAC の任務の成功を神さまにお祈りいたします。

(2011年6月29日発行の会報誌サバイ108号に掲載)